約 301,164 件
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/431.html
気まずい一夜が過ぎ去って、俺の居候生活には必然的に変化が生じることになった。 まず、トリアさんが朝起きてこなくなった。 光にあまり強くないこともあって彼女は元々夜型の生活をしてたらしいのだが、落ちてきた俺が ここでの暮らしに慣れるまではと、ここ一ヶ月は早起きして随分無理をしていたらしい。 朝は俺一人で起き、トリアさんは昼に起きてくる。昼に出かけるのは変わらないものの、部屋の 掃除は夕方に、浜の掃除は夜にシフトした。…顔を合わせる時間が減り、会話も最低限になった。 このままではいけない、とは思っている。 だけど、顔を合わせるとどうしても鮮烈に思い出してしまうのだ。 『ねえ、気付いていた…?』 『私がずっと、あなたの胸板に釘づけになってたこと』 『この前、私の水着姿に興奮していたでしょう…?』 『食べちゃおう、かな』 …向こうもとんでもないところを見られて、だいぶ混乱してたんだと思う。 けど、それにしたって。普段のちょっと淡々とした感じのやりとりと結びつかないあの妖艶さは。 思い出すたび、なんだか別人のようで……彼女と結び付けてはいけないような罪悪感があった。 まあ、そんなことを考えつつも勃つものは勃ってしまうわけで。ここしばらくの俺のシモ処理の メインディッシュは、そのときの記憶がヘビーローテーションで絶賛稼動中だった。男って弱い。 蒼拳のオラトリア 第三話「ばらばらにして、魚のエサよ」 熟考した挙句、俺はこうすることにした。 「トリアさん、これ売って金に替えてください」 「え…?」 夕食の席で俺が差し出したのは、あの夜お亡くなりになった愛用の携帯だった。 「いいの? 大事なものなんじゃ…」 「いいんです。説明は難しいですけど、今持っててもどうせ役に立たんものですから。バッテリー もこの間切れちゃいましたし」 「…そう…」 「売り上げもトリアさんが好きに使ってください。俺は居候の身ですから」 「でも……うん、わかった。ありがとう、ミナミ」 しばらく迷っていたトリアさんだが、なにか思い立ったのかちゃんと受け取ってくれた。 これが歩み寄るきっかけになるといいんだけど…。 翌日の昼、潮が引くまでの時間を適当に泳いでると、いつものようにトリアさんが出かけていく のが見えた。昨夜渡した携帯を売りに行くのだろう。 「トリアさーんっ、いってらっしゃーいっ!」 大声で呼びかけながら手を振ると、トリアさんも軽く手を振って返してくれた。 ようし、今日の潮干狩りは気合が入りそうだ。めざせバケツ二杯分! 「んどりゃああぁぁぁぁぁっ!」 無闇に気力150超えした俺は、わけのわからん雄叫びをあげながらハイペースで泳ぎまくった。 で、夕方。余計な体力を使った結果が俺の目の前にあった。 「は、ははは…ひさびさの半分以下……はあぁぁ~」 ため息をついても現実は非情である。いつもの貝がどのくらいの値で売れてるか知らないけど、 下手するとあの携帯をガラクタとして買い叩かれた挙句、翌日の貝収入も俺のせいで壊滅的という 踏んだり蹴ったりの状況が待ってそうだ…。 そういえば、いつもなら2、3時間程度で戻ってくるトリアさんが、今日に限って日が暮れても 帰ってこない。もしかしてほんとうに買い叩かれたんで、ちょっとでも高く売れるところを探して まわってるのかも……ううう、思考が際限なくネガティブに沈んでいく。泳いで解消しようにも、 あと少しで夜の帳がおりてろくに何も見えなくなってしまう。また闇の中で溺れるのはごめんだ。 とりあえず囲炉裏に火をおこし、貝汁でも作ろうと台所に準備に向かったところで、 にゅるりと、なにかが体に巻きついた。 な、な、な、なんだこれっ!? 少なくともトリアさんの腕とかじゃない、なんかタコかなにか の触腕っぽい!? 「トーリアっ、ただいまぁ。うふふ、おどろいた?」 耳元でなにやら艶めいた声がした。トリアって…俺をトリアさんと間違えてるのか? 「いつになく無用心だったねぇ。それに…あら、腕立て伏せのやりすぎで遂にムネがなくなっ…」 もそもそと俺の胸板をまさぐった後、暴漢が俺の顔を後ろから覗き込んで息を呑むのを感じた。 「…あんた誰、ここで何してるのよ」 そいつがしゅるりと体を離し、声を低めて言った。体が自由になったので俺もそちらを振り向く。 タコが立っていた。 …いや、なんかわりと大きめのムネをぶら下げてるし、体のラインも考えると恐らく女性だろう。 だが頭部の口元以外はタコそのものに見えたし、俺に巻きついていた触腕もどうみてもタコ。 なるほど、ここがこういう奇想天外人間の支配する世界だっていうのは本当らしい。俺の見てる 間に、肩のところで二つに分かれていた触腕がしゅるしゅると一本にまとまり、普通の人間の両腕 へとトランスフォームした。 「答えなさいよ、口がきけないの?」 「俺は居候だ。トリアさんなら、落ち物を売りに行ってまだ帰ってきてない」 「居候? …ふぅん、あんたヒトなんだ。トリアに拾われて、お情けで養ってもらってるわけね」 悪しざまな言いようにむかっときたが、たしかにその通りだった。 「やさしいのよね、あの子。誰にでも。……そこのところ勘違いするんじゃないよ、落ち物」 「あんた、トリアさんの知り合いか」 「気安くあの子をトリアなんて呼ばないでよ」 ぎろりと睨まれた。炎に照らされてゆらゆらと揺れる影が、彼女の苛立ちを体現しているように 見えて肝の冷える感覚をおぼえる。 「あんたはオラトリアさまか、さもなくばご主人様って呼んでればいいのよ。トリアさんだなんて 図々しい……あんた、トリアと対等なつもり? お貴族さまのお人形風情が…」 タコ女が怒気をはらんでじり、とこちらに距離をつめてきた。思わずじり、と後退する。 「…あんた、トリアを抱いたの?」 ストレートに訊かれ、俺の脳裏にあの夜がフラッシュバックする。 「いや…それは、まだ…」 「まだって何? あんた、トリアを抱こうと思ってるの…ふぅん…」 じり、また距離が詰まる。じり、距離を離す。 かつり。かかとが炉端の段差に突き当たった。途端に、タコ女のシルエットがぶわっと膨張した。 逃げようとして、段差でつまづきバランスを崩した。炉端に倒れた俺の上にタコ女が覆い被さる。 両手を拘束され、あの夜のように組み伏された。動きがとれなくなったのを確認すると、タコ女の 肢体がゆっくりと元のサイズ、元のかたちに戻っていく。 「くすくす…驚いた? あたしのカラダはわりと好きなようにカタチを変えられるの」 「どうする気だっ」 俺を組み敷いてご満悦のタコ女を睨み返すと、タコ女は自分の唇をぺろりと舐めて言った。 「そうね…あんたがトリアにふさわしいかどうか味見してあげる。もしあたしを満足させることが できなかったら…」 組み敷いた両腕を一対の触腕に任せ、もう一対がまた分離すると俺の首にしゅるりと巻きついた。 「ばらばらにして、魚のエサよ」 軽い力とはいえ首を絞めつけられ、一瞬呼吸が止まる。 …なんで俺、毎回こんな目に遭うんだ…? 「心配ないわよ、トリアにはあんたがあたしの姿に驚いて逃げちゃったとでも…」 「フーラッ!」 鋭い声がタコ女の背後から飛んで、タコ女が俺から弾かれるように飛びのいた。 咳き込みながら玄関を見やると、トリアさんが帰ってきたところだった。た、たすかった…。 「おかえり、そしてただいまトリアっ」 何事もなかったかのように挨拶するタコ女に、しかしトリアさんは厳しい表情を崩さない。 「…フーラ、ミナミに何をしたの?」 「(まだ)ナニもしてないわよぅ」 いけしゃあしゃあと韜晦する、フーラというらしいタコ女。 「今晩はただいまの挨拶に来ただけだから、もう帰るわ」 「…そう」 トリアさんににこにこと言いつつ、フーラは俺をぐいっと引き寄せて耳元に低い声で告げた。 「いいこと…トリアに手を出したら、全身の骨を砕いてあたしと同じカラダにしてあげるからね」 こ、こいつ…! かっとなって襟首を掴んだ手を振り払おうとすると、フーラはすいっと離れ、 「またね、トリア」 トリアさんの肩をぽんと叩いてさっさと出て行ってしまった。くっ、二度とくんな! 「大丈夫だった、ミナミ?」 「え、ええ、なんとか…しかし随分遅かったっすね」 「ああ、それは…」 トリアさんは俺の疑問に対し、背負ってきたらしい大きな籠を示して答えた。 「これを買っていたの」 「へ…?」 籠の中身は、大量の「男物の」衣類だった。 「実は、あのケータイとかいう落ち物が思った以上にいい値で売れたの」 「あ、そうなんですか?」 「使われている技術が向こうの最先端のものの上に、バッテリー切れ以外は無傷の品だったから、 ”猫井”の人が目を輝かせて飛びついてきて…」 「ネコイ?」 「猫井技研…ネコの国で落ち物を研究して商品開発をしてる大企業。コタツやテレビを普及させて 大きなシェアを持ってる」 そ、そんなんがいるんだ…商魂たくましいというかなんというか。 「それで、ミナミもいつまでも同じ服を洗って着まわしてるわけにはいかないから、ちょうどいい サイズのヒト用の服を見繕ってきたというわけ…」 「そうだったんですか、すみませんわざわざ。…あれ、でも服を探してたにしても遅くないですか」 「…いかにもお人形に着せるようなのばかりで、ミナミに似合うようなまともな服を扱ってる店を 見つけるのにとっても手間取ったの…」 「ははは…」 俺はペットショップに並んでいた犬用の服を思い浮かべた。うん、あんなのはたしかに嫌だ。 「ついでにこれも」 トリアさんが籠の底の方を引っ掻き回して、なにかカチューシャのようなものを取り出した。 不意に、脳裏を一時期大流行りしたアニメ主題歌がオーケストラアレンジで駆け抜けた。 「…あの、トリアさん…これは…?」 「? …見ての通り、ネコミミのカチューシャだけど」 「いや、ですからなしてこんなものが…」 「それは、ミナミが外出するときの危険を減らすため」 そういって、俺の頭にすぽんとネコミミを設置した。 「…ほら、こうすればネコのマダラに見えるから、ヒト買いに狙われなくなる」 「はあ、そうですか…」 今、絶対に鏡は覗きたくないと思った。 ぬこみみもーど ぬこみみもーどDEATH♪ …誰か、俺の脳内オーケストラを止めてくれ…。 (つづく)
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/1188.html
ーーカプセルコーポレーション 翌日。 グスフにやられたヤムチャ達が担ぎ込まれていた。 その場にはクリリンを筆頭としたZ戦士達がヤムチャの目撃証言に耳を傾けている。 「フリーザ軍の…生き残りだと?」 「孫の事を知っているのか」 「この気は・・・ギニューという人のものですね」 実際にナメック星でフリーザ軍と戦った事があるクリリンと孫悟飯は知っている。 「トランクスと悟天が経験を積むには丁度いい相手かもな」 「気の大きさだけならな」 ピッコロとクリリンが楽観的な表情で会話を始めた。 (おい 悟天 最初からアレでいこうぜ) (念の為に…ね) 少年達がヒソヒソ話を始めてドアから出ようとした。 「おい トランクス!仙豆はいいのか!」 クリリンが呼び止める。 「いいですよ。それは天津飯さんの分です」 そして少年達は駆け足で飛び出し空へと躍り出た。 「俺も行きます。」 孫悟飯が道着姿で決意を表した。 「あいつ等だけでも大丈夫じゃないのか?」 「ギニューさんの奥の手を考えれば必要です」 1時間後ー とある荒野。 グスフは岩の上に座って景色を眺めていた。 (のどかだなあ) あまりにも平和すぎる情景。 グスフが今まで経験してきた戦闘や訓練とは真逆。 彼の心の琴線に触れた結果齎された穏やかな空気は二人の少年によって破られた。 「そこの人ー!よくもヤムチャさん達をー!」 「敵討ちだー!」 「君は…以前会ったね」 グスフがトランクスの姿を認識して言った。 「あの時やっておけばよかった!」 トランクスが悔しがる。 「やるよ!」 「OK!悟天!」 二人がおもむろにポーズをとる。 何の事かわからないグスフは困惑の表情を浮かべた。 「フュー!」 「ジョン!」 ピカッと光が放たれ、一人の戦士が完成した。 「お前は?」 『ゴテンクス!』 自己紹介を終えるや否やゴテンクスの拳がグスフの腹に突き刺さる。 「げえ」 高速で空中に飛ばされるグスフの体をゴテンクスが追いかけて横からフックを入れる。 更に追跡し背中にキック。 (何というパワー!) 驚愕するグスフの背後に又しても移動し今度は膝。 『ハッハッハー!』 嘲笑するゴテンクスをキッと睨みながらグスフは力を発散して停止する。 「気をつけろゴテンクス!」 かけつけた孫悟飯が叫んだ。 『え?』 「奴は…ボディチェンジ という技を持っている。相手と自分の体を入れ替える技をな!」 「詳しいねえ…」 グスフが睨んだまま笑みを浮かべた。 『じゃあやる事は一つだね。ハアアアアア!』 ゴテンクスがパワーを上げる。 髪が金色に光り伸びていく。 (これ程のパワーだと…?) 「ハアッ!」 孫悟飯もパワーを上げる。 二人の戦士の全力の姿、「スーパーサイヤ人3ゴテンクス」と「アルティメット悟飯」降臨。 二人はグスフを挟み込む様に移動した。 『いくよッ!』 「か…め…」 孫悟飯がおもむろに構えてエネルギーの凝縮を始める。 『は・・・め…』 同様にゴテンクスも似たようなポーズをとる。 「う・・・」 グスフが汗を垂らす。 「『波ァァァァァァーーーーー!ッ』」 二つの閃光がグスフを襲う。 エネルギーと衝撃によりグスフの肉体は塵と消えた。 と思われたが… 「えっ!」 『ああっ!?」 何と 二人の「かめはめ波」が交互に動いたのだ。 確かにグスフを挟み撃ちにした筈なのに。 「避けろーゴテンクス!」 「うわあああ」 孫悟飯は全力でガードする。 もちろんゴテンクスも。 「ッ!」 「ゴテンクスと…」 「悟飯の気が…」 「消えた…」 ブルマが持っていたお茶を床に落とした。 「阿呆が」 戦士が消えた場でグスフは呟いた。 彼がどの様な事をしたのか。 本人以外は知らない。 ただ一ついえる事はグスフは1%の確率さえあれば戦況をひっくり返す事が出来る。 それだけだ。 To be continued.
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1297.html
第三話 「そんなこんなで放課後なんだな!」 「誰に言ってるんだ、友人1よ。」 急に隣の席で呟いた太めの友人1につっこみを入れつつ鞄を背負い教室を出る。 グラウンドでは汗臭い野球部員達がさっそく集まり始めて騒いでいるのが見えた。 青春とは部活だなぁ、なんて思ってしまうが悲しいことに俺には時間がない。 修練を重ねるためにはバイトだけでも時間調節が難しいのだ。 よく椎名は「なら私の家でごはん食べるの!経済的なの!」などと言うが甘えてもいられない。 大家さん一家には迷惑をかけっぱなしである。これ以上甘えることなどできはしない。 「楊ぅぅぅ!」 遠くからてけてけと音がしそうな走り方で廊下を走る椎名。むしろあれは競歩か。 そして音もなく椎名の後ろを滑る百乃。怖っ。なに?ホバー移動でもしてるんですか、君は。 「帰るのか?」 「うん!一緒に帰るの!」 「死ね近衛。」 頷く椎名に頷き返すと歩き始める。ちなみに百乃が言った言葉は聞こえなかったふりをする。 「今日は一緒に夕ごはん食べるの!」 「いや、新しいバイトだから。」 「失せろ糞虫。」 遠慮もあるが、バイトなのは本当だ。百乃の声はきこえない!きこえないよー! 「……せっかく……たのに、また新しいバイト……またつぶ……なくちゃ。」 「地獄に堕ちろ屑。」 ボソボソと呟く椎名と、嫌にはっきりと俺に向かって悪態をつく百乃。聞こえないよー!きこえ……ううう……ない。 しかし美少女に言葉で嬲られると心がひどく痛むのはなぜだろう。誰に嬲られても痛いと思うが、美少女だと尚更である。 校門を出てつらつらと歩けば周りの人間の羨望を一身に受けるのが俺の役割である。 ちなみに羨望とは殺意が9割、嫉妬が1割の視線のことである。 一応椎名は美少女ランキングギリギリ上位ランカー。百乃は美少女ランキング4位である。 先輩が2位なので俺の周りは美少女ハーレムといきたいところであるが俺に向かう好意は一つもない。 相関図を書いてみると先輩→椎名←百乃。離れてポツンと俺である。 それがなぜ分からないこの節穴共め! そんな俺の怒りを感じ取れない男どもに睨みをきかせながら俺は毎日登下校を繰り返す。 これもしかしなくても二人のボディーガードなんじゃないのか、俺。 家につくとすぐに学校の宿題をこなし、5時に家を出る。 バイトは6時から9時までの3時間で本格派を名乗る偽中国人さんが営む中華料理屋である。 なぜか本格派って言ってるのにラーメンがあるのだ。中国ラーメンはあれじゃありませんよ。 「キミが新しいバイトアルネ!」 店長の金田華(キム・ティエンホア)さんだ。どう考えてもかねだはなさんだと思う。 チャイナ服が似合う25歳くらいのお姉さんだ。ぷるんである。ぷるんぷるんだ。 「近衛楊です。よろしくお願いします!」 挨拶をすませると早速手を洗い、食器洗いにかかる。 同じ形の食器をまとめ、一気に洗ってしまうことが大量にやるコツだ。 よく師父にいたずらの罰として食器洗いをさせられた俺はこんなことばかり上手くなっている。 「早いネ!食器洗いのバイト慣れてるアルか?」 「ええ、まあ。どこもはじめは食器洗いですから。」 手元から目をそらさずに料理をしているティエンホアさんに返事を返す。 「ヤンは何かスポールやってるアルか?」 なぜ中国語読みなのか聞きたいが、聞いても意味がないことだろう。 それにその呼び方は師父と同じなだけに、少し懐かしくて嬉しくなる。 「一応武術ですが。」 「おぉう!流派は?」 やけに大げさにびっくりとするティエンホアさんに微かに笑いながら漏らす。 「一応形意拳を。八極拳を少しかじった後ですが。」 「ええー。あの突っ込んでぶっぱなす拳法アルか?」 ……ああ、やばい。なんかきてる。すごくきちゃってる。ものすごい俺怒っちゃってる。 「……お言葉ですが形意拳は貴女の考えるほど底の浅い武術ではありません。極めて先鋭化された実戦的武術であり、攻防一体の攻めは他の追随を許しません。そもそもが突進する武術という勘ちがいこそが形意拳の評価を落としたデタラメであり」 「アイヤーすまなかったアルよ。アタシが悪かったアル!」 両手を合わせてすまなそうに謝るティエンホアさんの姿に毒気が抜けていくのを感じる。 素人に対して自分の流派の自慢を延々とするなんて師父が聞いたら崩拳を放たれてしまうだろう。師父の崩拳は人を殺せるほど恐ろしいものなのだ。 ちなみに俺は喰らって3日3晩寝込み、あばら骨の罅で入院した。 「賄いはちょっと豪華にするから許して、ネ?」 まるで幼子のような笑顔とウィンクに完全に怒りが立ち消え、霧散していくのを感じる。 逆に自分が恥ずかしくすら思えて来て、ぶっきらぼうにいいっすとだけ返して食器洗いを続ける。 「店長ー!餃子5!チャーハン3!」 「アイー!」 店の方のウェイトレスの女の子の声に勢いよく返事するとティエンホアさんは急いで料理を始めた。 化粧っ気もないのにその汗がえもいわれぬ色気を醸し出す。 そして鍋を振るうと同時に振るえるぷるん。もはやぶるんである。 黙って続けて食器を洗い始める。雑念はよろしくない。修行の邪魔にしかならない。 ちなみに賄いは海鮮炒飯だった。ウェイトレスの子の喜びようから見てもどうやら本当に奮発だったらしい。 味は……美味かった。たぶん、今まで食べた中で一番おいしいチャーハンだったと思う。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1571.html
663 :名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 19 41 32 ID b3zXkqNs 次の日、木村千華は注目を集めていた。 髪の短くなった彼女に、クラスメイトの全員の視線が集まっていたと言ってもいい。まあそりゃあそうだ、髪の長い奴がばっさり切ったら誰だって気になる。昨日の夜に遭遇していなければ、同じく衝撃的な事件と思ったに違いない。 「髪切ったんだね。理由知ってる?」 当然の疑問をこちらに投げてきたのは、クラスメイトの松本尋。今は真っ黒な肩ほどのソバージュの髪だが、一年くらい前までは見事な金髪だった女。 中学時代に仲の良かった連中の一人だが、その仲間のうち、同じ高校に進んだのは自分を含めて二人だけ。入学して同じクラスになれたので、中学時代そのままに仲良くやっている相手だ。 ただ、この見た目可愛い女子であるところの松本と入学直後から仲が良かったせいで、クラスの男子から若干距離を置かれていた気はする。それも今では別になんてこともなく、みんなと程よく仲がいいわけだが。 前の席の奴がよく遅刻するからか、松本はいつも前の席の椅子に横に座り、正面に陣取って会話を始める。ちなみに木村千華の席は窓際であり、廊下側のここは正反対なので、噂話が彼女に聞こえることはない。 664 :名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 19 42 24 ID b3zXkqNs 「俺が知るわけねーだろ」 そう返したが、本当は少しだけ知っている。長い髪が嫌いになったからだと言っていた。とは言え、肝心の嫌いになった理由のほうがわからないのでは、その他野次馬たちと大差ないのだった。 「まあ、そうだよね。大須賀が知るわけないよね」 にやついた、シニカルな表情を浮かべる松本。こいつはこういう奴なのだ。いつだってローテンションで、いつだって不機嫌そうで、いつだって口が悪い。調子がいいときは人を馬鹿にしてるときとくる。 しかし、嬉しそうなことそれ自体が大変珍しい。普段は馬鹿にしたりさえしない。 「どうしたお前。なんかいいことでもあったのか」 「……ちょっとね。教えないけど」 教えないとはっきり言われたら、聞き返すこともできない。実に会話を切る奴である。 「そういう大須賀こそ、いいことあったでしょう。顔が楽しそうだよ」 「顔が楽しそうて。俺どんな顔してんだよ」 とりあえず乗ってみたが、見てわかるほど露骨に緩んでいたりするんだろうか。いや実際、松本に見破られている以上、間違いないのでは。 「何があったか言いなさい」 やはり、今日の松本は機嫌がいい。いつもはもっとだるそうだし、正面に陣取るくせに特に会話がないなんてのもよくある。 それは置いておくとして、まず昨日の出来事を他人に話していいものか、まったく判断ができない自分がいた。傷心のクラスメイトを慰めただけで、それほど特別なことをしたのではないように思えるし、誰にも教えられない秘密を共有したような気もしていた。 「お前が言ったらな」 今言わなくても別にいいか、と軽く決断し、適当に返答すると、松本はそれについてもう触れず、別の話題に移行した。そうして、ホームルームまで松本とだらだらと過ごす。いつも通りの朝だった。 665 :名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 19 43 35 ID b3zXkqNs そんな感じでよくつるんでいる松本だが、放課後まで一緒なことはあまりない。 話は単純で、松本の交友関係が意外と広いからだ。あの嫌味ばかりのコミュニケーションでよく友達を増やせるもんだと思うが、大事なのは付き合いのよさと聞き上手なことらしい。 今日は友人と遊ぶと言っていた。そういう理由があるときは、突然呼び出され、買い物に付き合わされたりといったことは起こらないので、放課後は完全に暇になりそうだった。 昨日のこともあり、今日は少し店で練習でもしようかな、などと思いながら迎えた帰りのホームルームも終わり、各々ばらけだしたクラスメイトたちと適当に挨拶を交わし、帰路に着く。 バス停は少しだけ学校から離れている。歩いて五分強くらいだろうか。 学校の前にもバス停はあるが、残念ながら路線が違い、自宅の近くを通るバスは学校の裏手の、少し開けた二車線の道路を走っている。ほとんどの生徒が学校前のバス停を使用していて、こちらを使うのは極少数だった。 他の利用者と噛み合わなければ、一人でバスを待つこともたまにある。が、今日は先客がいた。遠くの後姿でも木村千華だとわかるのは、先客がいるときは大体が彼女だからだった。 髪が短くなり、特徴がなくなってもわかるものだな、と思いながら彼女の横に立つと、こちらに気付いた彼女が振り向く。なんと話しかけたものか迷うと、彼女のほうから声を掛けてきた。 666 :名無しさん@ピンキー:2010/05/04(火) 19 44 33 ID b3zXkqNs 「大須賀君、今日はこれから、暇?」 「ん?」 完全に暇だ。これから自宅に帰るだけで、帰った後の予定も特に決まっていない。 「暇だよ。帰るだけ」 木村は、と聞き返し、何となく会話を続けようと思ったが、彼女のほうは違った。 「じゃあ、これから私の家に来て」 明確な目的があっての質問だった。自宅に招待するつもりで、予定を聞いてきたのだ。 「……え?」 しかし、その内容にはどう反応していいのかわからなかった。それにしたって突然すぎるだろう。クラスメイトとは言っても、まともな会話をしたのは昨日が初めてなのだ。 「なんで急に」 やっぱり何を考えているのかわからない。戸惑いのままに疑問を口にすると、彼女はまた、昨日の夜のように笑顔を見せる。 「昨日のお礼がしたいから」
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/1793.html
同じスタートラインから走り出して、待っていたのは正反対の結末。 全てを手に入れたエースオブエースと、全てを失った狂戦士(バーサーカー)。 失ったものは戻らないなら、せめて確かめるしかない。自分の何が間違っていたのか。 守りたかったものを、今度こそ守れるように。俺は、戦う。鏡の向こう側と。 魔法少女リリカルなのはDestiny 第三話『伸ばされた手』 機動六課(予定)隊舎一階、ガレージ。ある程度調査も済んだ後なのか、緑色の機械人形、ザクウォーリアは放置されていた。 装甲もぼろぼろのまま放置された姿は痛々しくもあるが、妙ないじられ方をして機体がおかしな事態になっているよりはマシである。 「追尾機構(トレーサー)が生きていてよかった、ってところか」 「ダメージの方はどうしようもないが、な。それに技術漏洩も避けられない」 メンテナンス用のハッチを開けてダメージを確認しながら、口々に語るシンとレイ。一通りのメンテナンスも学んでいるため、現状はすぐ分かった。 大規模砲撃に晒されたシンのアーマーは対魔力コートが吹き飛び、全部位にイエローのダメージ。挙句ガナーウィザードは砲身から吹き飛んでいる。 強力な魔力含有の物理衝撃を受けたレイのアーマーは該当部位を中心にレッドのダメージ。他に打撃はないが、機構としてはほぼ終わっている。 ちなみに、ダメージは色で表示され、青を無傷として緑、黄色、オレンジ、赤の順番にダメージは酷くなる。 装甲とは別でダメージが表示されるため、実質レイのザクは行動不能であった。 (追尾機構も含め、BAの情報はFaithバッジを通じて利用者が把握、情報共有する事が可能である。また、バッジはセキュリティも兼ねる) 「ウィザードを付け替えるとしても、実質一体は行動不能、か……」 冷たい計算を働かせるレイの横で、重い音がこだまする。 使用不能になったウィザードの交換は半自動で行われるため、こちらから手出ししなくてもいいのは利点である。 そのため、二人ともが外部から接近する存在に気付けた。 「何か、来る!?」 「レイはザクを起動してから来てくれ! 時間を稼ぐ!」 言いながら走り出したシンの背中に、レイはさらに声を続ける。 「丸腰で行くつもりか!?」 「アレを使う! そもそもどうにかしないと脱出できない!」 その時フェイトが戻ってきたのは、全くの偶然だった。はやてを陸軍本部に送り届けた後、長引きそうだということで先に戻ったのである。 (免許持ちが自分しかいない為、時折こういうことが起こるのである) ともあれ長時間の運転に疲れて伸びをしているところに、外部から近寄る何かの存在に感づいた。 「バルディッシュ!」 懐から自分のデバイスを取り出し、戦闘態勢を整える。長柄の斧となったデバイスを握りしめ、市街地のほうからつっこんでくるゴーレムの存在をすぐに見つけだす。 即座に応対しようと一歩を踏み出した彼女の横を、走り抜ける赤い服の少年。 「――っ! 下がって!」 危険だから、と続けてフェイトが声を張り上げる前に、少年は襟元の勲章に声をかけていた。 「インパルス! セットアップ!」 彼の背後に現れる、人型の機体。その中に彼が飲み込まれてゆく様を、半ば呆然と見据えるフェイト。 灰色だった機体が、赤、青、白の三色に色づいてゆく。それが自律稼動するゴーレムの類だと、理解するのに一瞬かかった。 これが、シンとフェイトの出会いであった。 (ああもう! 何をやってるんだ俺は!) インパルスの内部で、シンは自分に対して毒ついていた。第三者の接近は向こうにも混乱を呼ぶはずで、そこをついて脱出するべきだと理性は訴えている。捕まったままでいいはずがないし、隠し通せたインパルスという手札をさらす意味はないはずだった。 しかし、同時に胸の底でこれでいいのだと思いもする。自分たちが逃げ出さなくても、ここにいる連中があのゴーレムを片づけるだろう。 だが、そこには少なくない被害が出る。どんな状況であれ、それを許容できる自分ではない。 守るために力を欲し続けたシン・アスカという少年の根本が、今この状況を見逃すべきではないと強く訴えていた。 守るために、戦う。それが自分の変わらない信念だから。 『―――お前たちなんかっ!』 そこまで思考して、シンは考えるのをやめた。敵はすぐそばに迫っている、もうそんなことに思いを馳せている余裕もなさそうだった。 腰から二本の対装甲ナイフを抜き、円筒形をしたゴーレムの一つに切りかかる。今は魔力を使う装備をほとんど使えないし、実体弾兵装は持っていない。白兵戦しか有効な戦術がなかった。 鈍い手応えが返ってくる。装甲を切り裂き、目前のゴーレムが沈黙したのをほとんど見ず、自分を取り囲む彼らに向け刃を次々に振るう。 (対魔力コートはない、か? だとしてもこの数は脱出の邪魔に……!) 二体目のセンサーとおぼしき部位にナイフを突き立てながら、シンは残ったゴーレムを確認する。レイが出てくるにはもう少しかかる。少しでも数を減らさなければ脱出が難しくなる。 そう思うシンの背後を、雷光が走り抜けた。 『あれは……!』 スピーカー越しのくぐもったつぶやきが、空中に溶ける。常識を逸脱したスピードで三体のゴーレムを砕き、さらに雷光が前方のゴーレムさえも粉砕する。 駆け抜ける金色の髪が稲妻に見えるほど、その姿は鮮烈で華麗だった。 (これだけのスピード……。「黄金の雷光」か!?) 時空管理局のAAA級魔道士、フェイト=T=ハラオウン。最速とも称される彼女の名前ぐらいは、シンでさえ知っている。 彼女も「標的」の一人であり、速度差がありすぎるという理由で優先目標からは外れているから。 次いで空から降り注ぐ、桜色の閃光。一度見たからこそ、その正体には感づいている。 上空に、彼女がいる。時空管理局が誇るエースオブエース。ここにきて、シンは一つ覚悟を固めた。 逃げ場はもはや、ない。フェイトを振り切ることは事実上不可能に近いし、空をも塞がれてはそもそも逃走経路がない。ならばせめて……。 『シン!』 『レイ……。記録を、頼む』 装備を完了したレイの声に短い通信で頼みごとをして、シンはきっと天を見上げた。覚悟をきめた声で、装備を要求する。 「セット、フォースシルエット」 『Roger!』 システムから返ってくる、短い宣言。 対装甲ナイフが腰に格納され、代わりに銃と楯が転送される。背部に大型のブースターも装着され、重量バランスが整えられる。 相手が何か言う前に、頭上の敵、高町なのはに向かって引き金を引いた。短く、そして明確な敵対のサイン。 ビーム・ライフルを速射しながら、シンはなのはに向かって飛び上がる。 『可能性があるとはいえ、無茶をする……』 『戦うことが?』 ザクウォーリアのカメラ越しに戦場を見上げるレイの耳に、第三者からの通信が入る。あっさりと通信機の波長を見破られた事実に奥歯を噛みしめながら、隣に来る姿に一瞬だけ視線をやった。 『なのはは、強いよ?』 『シンには、負けられない理由がある。高町なのはに対しては、特に』 アクセルシューターに翻弄されるシンを見据えながら、フェイトは念話を飛ばす。意外にも、短い返答が返ってきた。 不利な状況から逃れようとビームサーベルを振るい、バルカンを打ちながらなのはに肉薄する、シン。 『満足するまでやらせるしかない。どの道、俺たちは手詰まりだ。ここからは逃げ出せない』 『シン、だっけ。彼は逃げないよ。そしてきっと、なのはに捕まえられる』 距離が離れた。本来ならしなくてもいいチャージの時間をとるなのはと、そこにわずかな希望を託すシン。 『どういうことだ?』 『あんなに必死に、何かを守ろうとする人を。なのはは絶対に見捨てないから』 シンが加速するのを見送りながら、フェイトはそういって空に舞い上がった。なのはに加勢するのか、と一瞬だけ思ったが、それにしては遅すぎる。 稼がれた距離を詰めるべく、シンは飛ぶ。全推力を前進に当て、落ちる前に貫く。取れる行動はそれしかないからこそ迷いはない。 (前へ!) 呪文のように念じながら、飛ぶ。しかし、運命はほんの少し、なのはの方に味方した。 「ーーバスターッ!」 完成する、なのはの砲撃呪文。視界が桜色に染まり、体が後方へと押し流されてゆく。 それでも、シンは諦めなかった。 (前へ、前へ、前へ!) 桜色の砲撃の中、それを振り切るようにインパルスが飛ぶ。装甲をほとんど吹き飛ばされ、内蔵機構を所々露出しながら、その姿は、よろよろと斜め前方に墜落する。 力尽きかけたフォースシルエットのブースターが、最後の一瞬、吼えた。 『とど、ケエエエエエッ!』 壊れかかったスピーカーから、ノイズ混じりの絶叫が走る。先ほどの三分の一、もう小刀ぐらいの長さしかなくなったビームサーベルを、なのはに向かって突き出す。 その一撃は、確かになのはの右袖を裂いた。 (ここ、までか……) 全対魔装甲剥離、並びに砲撃のダメージにより全部位にレッドダメージが入っている。フォースシルエットも沈黙し、もはや墜落するしかないインパルスの右手首を、白い手が掴んだ。 確認するまでもない。今さっきバリアジャケットの袖を切り裂かれた、高町なのはの細い腕。 「捕まえた……っ。結構重いね、これ」 「手伝うよ、なのは。この中に人が入ってるから落としたら駄目」 それなりの重量があるバリアアーマーを掴んで離さない、小さな手。少しして後ろからも浮力を感じ、自分がどうなったのかを悟るシン。 (あそこまでした俺の手を、それでも捕まえるのか……) 求めて伸ばしたその手に、捕まえるまで決して諦めない姿。それはまるで、あの日の自分と重なるようで。 「インパルス、兵装解除」 諦めたような、憑き物が落ちたような声でシンが小さく命じる。何も掴めなかった自分の手は、こうして高町なのはに捕まった。
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/701.html
空を見て! スターマンだよ! きっと僕らに会いたがってるんだね!」 彼は地上に降り立ちたかったが、同時に怖がってもいた。自分が子供達の心を狂わせてしまうのではと。 第三話 『INTERVIEW WITH THE VAMPIRE』 「寄宿舎に着いたのはいいけど……う~ん、どうしよう……」 住み慣れし我が家、それは銀成学園寄宿舎。 その正面玄関前でまひろは仰々しく腕を組んで頭を捻っていた。 眠気を誘う50分の授業を六度耐え切って一日を終え、あとは門をくぐれば、迎えるは週末の夜。 何がそんなに彼女を悩ませるのか。 答えは三つ。 ひとつは―― オドオドとした様子で横のまひろと目の前の寄宿舎を交互に見ている長身の外国人女性。 己が吸血鬼であるという事実をひた隠しにしたままのセラス・ヴィクトリアだ。 もうひとつは―― 寄宿舎の広さである。 相当な築年数と思われる年季の入った木造建築で、二階建てと高さこそ無いものの、敷地面積は そこいらのマンションにも負けてはいない。 学校までの距離の問題や家庭の都合等、実家からの通学が難しい生徒達の暮らしを一手に引き受けて いるのだから当然と言えるのかもしれないが。 つまり、セラスをまひろの部屋に連れて行くという事、イコール、異邦人であるセラスがこの広大な 寄宿舎内を歩き回らなければならないのだ。 そして、最後のひとつ―― 寄宿舎内に住まう多数の生徒達の“眼”。 誰の眼にも触れられずにまひろの部屋までセラスを連れて行けるのかと考えれば、甚だ心もとない。 幸いにも夕食時間の真っ最中である為、大半の生徒は食堂に移動しているのだろうが、それでも誰かに 遭遇する確立の方が高いだろう。 ただでさえ人目を惹く金髪碧眼白皙の外国人なのだ。 通学生の友人を連れて歩くのとは訳が違う。 「どうしたらいいかなぁ~。変装……? 窓から入る……? セラスさんを箱に入れる……? う~~~ん」 頭だけではなく遂には身体まで捻りながら唸り続けるまひろ。 そんな彼女にセラスが遠慮がちに話しかけた。 「あ、あの、まひろちゃん。ちょっといい事を思いついたの。たぶん上手くいくとおもうんだけど……」 「えっ? なになに? どうするの?」 ウェーブのかかった茶髪から見え隠れする耳が内緒話を聞くようにセラスの口元に寄せられる。 「あのね、出来るだけいつも通り部屋に戻ってくれないかな。まひろちゃん一人で」 おかしな話だ。どうやったら彼女を見られないように部屋に連れて行けるかと悩んでいるというのに。 予想外の不可解な提案に、まひろは至極当然の疑問を返す。 「でも……セラスさんは?」 「私なら大丈夫。ね?」 セラスはまひろの肩をポンポンと叩きながら、仲良く雨に打たれて乱れてしまった彼女の前髪を 優しく整える。 斗貴子とはまた違う雰囲気の“お姉ちゃん”を肌で感じ、じんわりと喜びが湧き出てくるが、 今はそんな場合ではない。 「う、うん……」 セラスのやけに自信たっぷりな様子を見て思わず頷いてしまったが、その意図はわからないし、 入口の前に置いていくのも心配だ。 まひろは気が進まぬままに正面入口から玄関へと足を運ぶ。 何度も何度も立ち止まって、セラスの方を振り返りながら。 「あ、おかえりー。遅かったねー」 「おう、武藤。下げられちまうから早く食堂行った方がいいぞ」 やはり予想通りである。 自室へと向かう道のり、数は少ないが早めに食事を終えた生徒やこれから食堂へ向かう生徒がすれ違い、 声を掛けてきた。 その度にまひろは「え? あっ、あー。う、うん。アハハ」などとひどく挙動不審な返答でビクリと 反応してしまう。 更には何度と無く不安げに後ろを振り返る。 もしかしたらと思ったが、まひろの後を付いてくる様子は無い。 そんな怪しさ満点の動作を頻繁に繰り返しているうちに、たどり着いたのは自室の前。 セラスに何のアクションも見られないまま、まひろ一人が自分の部屋に着いてしまった。 (もう一度、玄関に戻ってみようかな。でも「いつも通りに戻って」って言ってたし……) 入口の前にセラスを置いてきてしまっているのだ。 まひろはそれでも尚、しばらく戸の前で自分が歩いてきた廊下の先を未練たっぷりに眺めている。 「セラスさん、どうするつもりなんだろう。大丈夫かなぁ……」 しかし、いつまでも部屋の前に立っていても事態が好転する訳ではない。 ためらいながらも、まひろは自室の戸を開けて中に入った。 そして、真っ先に眼に飛び込んできたものは―― 「ハハ、ども……」 ――申し訳無さそうに笑うセラスの顔。しかも、どアップで。 「うわっ! びっくりしたぁ!」 本来そこにいる筈の無い、セラスの突然の出現。 流石のまひろも驚愕のあまり後ろに飛び退き、背を戸に打ちつけた。 「ご、ごめんね、驚かせちゃって」 慌てて謝るセラスに向かって、まひろは大きく丸い眼をいっぱいに開いて矢継ぎ早に尋ねる。 「どうやってここまで来たの!? いつの間に!? 何で部屋の中にいるの!?」 「んっ、うぅ……」 セラスは言葉に詰まった。 まさか“外からまひろの足音を聞き分けて部屋の位置を割り出し、彼女が戸を開けた瞬間に眼にも 留まらぬ速さで寄宿舎内を走り抜け、部屋の中に飛び込んだ”とは言えない。 自分はただの外国人。吸血鬼? 何それ、食べれるの? この親切で人の好い正直そうな女の子ならあるいは、とは思う。 だが、やはり秘密にしておいた方が何かと丸く収まるだろう。それはまひろの為でもあるのだ。 「ええっと、そのぅ、つまり……。ま、窓! 何とな~くまひろちゃんっぽい窓があったの! そ、それで忍び込んでみたら、ちょうどまひろちゃんが入ってきたとこでね。アハ、アハハ……」 脳髄をフル回転させた割には、何とも苦しく稚拙極まる嘘しか出てこない。 まひろは最初、キョトンとした顔でセラスの怪しい説明を聞いていたが、やがて感心混じりの 笑顔で彼女に近づいた。 「そうなんだぁ! しばらく住んでたら窓にも私っぽさが出るんだね。でも、良かった。誰にも 見られなくて――」 まるでそうしたくてウズウズしていたと言わんばかりに、まひろはセラスに飛びつき、その豊満な身体を ギュッと抱き締める。 「――もう安心だよ! ゆっくりしていってね!」
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1263.html
205 :桜の幹 [sage] :2009/06/03(水) 18 19 39 ID 3LREFAZM 信じられない。幹也に友達が出来てしまった。 しかも二人も。 その友達とやらのせいで私はこの二週間まともに幹也と夏休み中の午後の余暇を幹也と過ごしていない。 今日だってそうだ。幹也はお昼ご飯をすぐさま片付けると、私に断りもせずに出掛けてしまった。 「じゃあ、幹也をよろしくね」 「はい、分かりました。おばさま」 幹也のいなくなった後に私は入れ替わりの様な形で幹也の家に来てしまった。 おばさんを見送った後、思わず爪を噛んでしまう。 「熊原・・・・・武士、か」 これは私にとって呪いの言葉だ。 私から幹也を奪おうとする奴。 何年も、何回も、私が守ってきた幹也。 私がいる限り、幹也には私しかいない。 許せないのか、許さないのか。どちらでも同じ事だけど、私はふいにそんな事考えてしまう。 幹也も幹也だ。幹也には私しかいないはずなのに、私がいるのに幹也は・・・・・。 許せないのは幹也か、ゴミか、私は混沌を極めつつある私の中にホトホト呆れていた。 今、私はなぜ幹也を責めたのか。ついに我慢も限界なのか。 なら、私はそろそろ幹也に認めさせようと思う。幹也にも、私にも互いしか必要がない事を。 幹也もきっと分かってくれる。だってこんなにも素敵な事なのだから。 206 :桜の幹 [sage] :2009/06/03(水) 18 20 11 ID 3LREFAZM ◇◇◇ 「なぁ、菅野。お前とよく一緒にいる女子ってさ、お前の彼女?」 武士はつまらなさそうにポテチを一つ摘んで僕に問いかける。 小町先輩も「あ、私もその話興味あるー」などと会話に参加してきた。 「えっと、女子ってさくらの事だよね?」 「他にお前喋ってる奴いないだろ?」 たしかに。 「大体ミッキー顔はいいのにさ、なんで嫌われてんのさ?」 僕は曖昧な笑みを表情に貼り付けて、分からない様子を首を横に振るだけで伝える。 実際、あの事件で変わってしまったのは周りではなく僕の人を見る角度なのかも知れない。 何度も小突く教師を睨み、土下座して頭を上げた時に僕を突き刺していた視線たちに一瞥をくれた時、さくらが汚れた机を必死に拭いているのを見た時。あの時に、僕は少し厄介な事に気が付いてしまったのかも知れない。 残酷な事に要領を上手く得ないそれは、あの時から僕の心の隅を犯し続けていた。 「僕の事はともかく、さくらはとってもいい奴です。なんで僕なんかを好いてくれているのか、僕自身、分からないぐらいで・・・・・」 困った風に言うと、武士が僕の肩を弱くパンチした。 「馬鹿、俺が聞いてるのは彼女かどうかだよ」 僕はパンチされた肩を軽く摩りながら有耶無耶に頷いた。 なんであれ、さくらは僕との関係を未だに続けてくれているのだから。 ◇◇◇ 遅い、遅すぎる。 私がご飯を作り終えてもう一時間も経つのに幹也はまだ帰ってこない。 ご飯をいつ作り始めるか電話で聞いたのは丁度一時間半前。 幹也はあと三十分で帰ると言っていたのに、幹也はそう言ったはずなのに。 幹也が私との約束を蔑ろにした?本当に? 時計を何度も何度もイラつきながら睨む。 心配だ。もしかして事故にでも遭ってしまったのか? もう少し待ってから、もう少し待ってから。 そう心の中で祈りみたいなモノを心の中で何度も描き、玄関を監視し続けている。 時計を見た。 人生で一番長いに時間が経過しようとしていた。 携帯のリダイヤルからすぐに幹也を呼び出した。 prrr、prrr、ガチャ。出た、呼び出し二回。 「もしもし、幹也?」 「あっ!石田さん?」 電話に出たのは幹也の声では無かった。委員会で何度か聞いた事のある声だった。 少しの逡巡の後、名前を思い出した。 「熊原先輩ですか?」 「うん、ミッキーさ携帯忘れて行っちゃったみたいでね、ん?あれ石田さーん?」 全身から血の気が引いていった。 いつの間にか私は拳を作っている。 聞こえないように受話器の向こうに気付かれないように、息を吐いて、吸った。 「幹也が、そちらのお宅を出たのは何時頃ですか?」 「え?ああ、ついさっきだよ。いやぁ、スマブラで盛り上がっちゃってさー」 「失礼します」 私は用件を聞いてすぐに電話を切った。 幹也は私との約束を、約束を・・・・・。 207 :桜の幹 [sage] :2009/06/03(水) 18 20 38 ID 3LREFAZM ◇◇◇ 「ただいまー」 玄関を開くと仄暗い廊下に白い靴下を履いた両足が見えた。 膝ぐらいまでしか見えないけど、僕はすぐにそれがさくらだって分かった。 「おかえり」 消えそうなか弱い声でそう聞こえた。 「さ・・・、さくら?どうしたの?明かりも付けないで」 「幹也・・・・・」 ひたりと白い足が僅かに前進する。 ゆっくりと全身が見えてきた。 白いワンピースに、シャツを羽織っているみたいだ。 でも白いワンピースだけが仄暗い背景に映えて少し不気味だ。 「・・・・・ッ!」 思わず立ち竦んでいると、いきなり襟を掴まれ引き寄せられた。 「幹也、私が電話した時何時ごろ帰るって言ったっけ?」 僕をすごむ眼がギラギラしていた。 「・・・・・幹也、答えて」 「あっ、う」 首が締まり始めた。 さくらの震える手が、僕を責める眼が今までの何よりも怖かった。 「私、言ったよね?六時半には帰ってきてね、って」 僕は声ではなく、首の動作だけで答える。 「そう。言ってたよね?じゃあね幹也、今は何時か分かる?」 僕はやっとの事で八時半だと答える。 そこでやっと、僕の襟を閉めていた手が解かれた。 同時に肺に今までの分の酸素が入ってきた。思わず咳き込む。 「が、っは」 荒い息遣いをしながら僕はその場に蹲る。 さくらの方を見上げると、さくらは薄い笑みを浮かべながら僕を見下げていた。 「幹也ぁ・・・・・」 さくらはしゃがみ込んで、僕の顔を覗き込んできた。 「さ、さくら?どうしたの?」 さくらは何も言わずに、僕をただ見つめるだけ。 さくらの黒い瞳が、僕だけを閉じ込めている。 「幹也は・・・・・」 ふいに声が掛かった。同時にさくらの両手が僕の顔を包む。 「どれだけ私が待ってたか、知ってる?」 「え?」 「私が、夏休みに入ってからどれだけ我慢してきたか。ねぇ、知ってる?」 未だに僕は黒い宝石に閉じ込められていて怯むばかりだ。 「答えてよ。幹也」 「・・・・・っ」 何か言おうとしたけど、それはすぐに奪われてしまった。 「んっ、ちゅ・・・・・」 さくらが僕の口を塞いでいたからだ。 さくらの舌が、僕の舌と絡められる。 それでも、黒い瞳は、宝石は僕を捕まえたままだった。 208 :桜の幹 [sage] :2009/06/03(水) 18 22 25 ID 3LREFAZM ◇◇◇ 長い、とても長い口付けが終わり、さくらは満足そうな笑みを浮かべて、言った。 「幹也、今日はいつもより気持ちよくしてあげる。明日も明後日も、ずっと、ずっと」 さくらがおかしくなっている。それには気付いた。 でも僕はさくらの得体も知れない圧迫感に閉口するばかりでどうする事も出来なかった。 ただただ、さくらの言う事に頷くばかりで、宝石から逃げる事も出来なかった。 「部屋に、行きましょう?」 何だか艶かしい口調でさくらは言う。 僕は頷くだけ。 さくらは僕を立たせて、手を引きながら、僕と一緒に部屋に入った。 それから僕はさくらにベッドへと押し倒された。 「あは、幹也。今日も素敵だね」 さくらは僕のシャツをめくり、臍から舐め始めた。 徐々に上へ、上へ、と這い上がってくるそれに僕の背筋は敏感に反応した。 不気味な痺れが気持ち悪い。 「うっ、」 「えへへ、みきやぁ、みきやぁ」 首筋まで来ると、さくらは荒い息遣いで僕の耳を口に含んだ。 「さくら?」 「もう、もう我慢出来ない」 さくらはそう言ってワンピースを捲って、ショーツを脱ぎ捨てた。 それから僕のズボンのチャックを下げる。 「幹也、私のアソコ、もうグチョグチョだよぉ」 さくらは少し腰を浮かして、僕の性器にを自らゴムを付けて、挿入した。 「あっ!あっ!」 さくらは挿入したあと、僕の方に倒れてきて何度か身体を震わせた。 それでもまるで呪文の様に僕の名前を唱えているさくらに僕はまた竦んでしまった。 さくらはゆっくりと身体を起こして、騎乗の体制に戻る。 揺れる黒い瞳はただ僕だけしか映していない。 「えへへ、幹也ぁ?もっと気持ち良くして上げるね?」 妙なアクセントを含みながらさくらは自分の右手の指を舐めて、繋がっている場所へとその手を回した。直後。 「ッッッ!」 電撃が走った。感じたことも無い痛みだ。 「幹也、痛いよそんなに締め付けちゃあ」 さくらが僕のお尻に指を入れていた。 痛い。思わず視界が滲む。 「さ、くら・・・やめ、うっ!」 さくらが中で指を動かしたのがまた鮮烈な痛みを走らせる。 ◇◇◇ 「幹也?そんなに力入れたら、んっ、切れちゃうよ?」 「あ、がっ!」 ぬるりと、穴が広がった。 「二本も入っちゃったよ、幹也」 「いたい、よ、さくら」 さくらは二本の指を上下に動かしてさらに奥に指を突っ込んできた。 「幹也、気持ちいいでしょ?」 また指が動いた。 「あぅ!」 次の瞬間、今までに無い射精感が、一気に噴出した。 ドクン、ドクン。と脈を打っているのが分かる。 「あはは、幹也ぁ、ゴムを通しても分かるよ?すっごい量だねぇ」 僕はその満足そうなさくらの呂律が回っていない口調を最後にその日の幕を下した。
https://w.atwiki.jp/locoloco/pages/17.html
俺第3話(リアル) そのインド人は、イギリスに本社がある広告代理店に勤めていて、今は東京の支社にいるらしい。それで、富良野には観光で来たというのだ。 インドのことを色々と聞いてると、5年来の知り合いである「かおりちゃん」が男2名女3名を連れて入ってきた。 「おーけいしん!一緒に飲もう!ほらあんたも!」 と、カオリちゃんは強引に私とインド人をボックス席へと運んだ。カオリちゃんは森陽介と一時期付き合っていた、南海キャンディーズのしずちゃんみたいな顔だ。 12時をまわり、カラオケに行こうとなった。反対意見は私だけで、みんなノリノリ。嫌々付いていったが、歌わないと心に決めていた。 AER(アエルー)という、富良野で唯一2時まで開いてる遊び場。入店してみんな歌い「けいしんも歌ってよ!」と言われるが断り続ける。1時間半経過し、再三拒否し続けていたら場の雰囲気がおかしい。どうやら、私が冷めさせてしまったようで、帰ることに。外にでても私だけ浮いた感じにさせられ、まさに苦痛の空間。シャードル(インド人)もその空気に気付いている。 歩いてセブンの方へ行き、大分酔っぱらった私は一人ごとを言うように聞こえるように言った。 「カラオケ行きたくないって言ったのに連れてきたおめぇらが悪いんだろうが!」と。そして、イベント中のはしご酒大会の看板を一殴り、「バァァァン!!」 セブンのところで分かれた。ふて腐れた私は、飲み直そうと思いALEXに出会ったバーに向かう。 富良野には最近このようなバーが新しく3軒ほどできた。 歩きながらいつものように電話する。森、、、出ない。今野、、、出ない。どいつもこいつもつかえねぇ。そうだ!! ワンショットで会ったエリに電話する。すると、2時近いが出た。今から会おうと強引に誘い、ベントスのところで待ち合わせすることになった。 半袖の私は、がたがた震えながら歩いて向かう。 途中ローソンでビールとチーズを購入。20分ほど歩いてついたベントス。暗い国道と駐車場の間を照らす自動販売機の横に彼女は縮まって座っていた。 つづく…
https://w.atwiki.jp/gran_kokuto2017/pages/31.html
6月末日 クーデリカはシラクサにでかけていて朝にいませんでした。 ジロー便の時間まで散歩していると。 前方から、おいしい匂いのランディさんが歩いてくるではありませんか。 何かいいものでも食べましたか?作りましたか?と聞いても教えてはくれませんでした。 クーデリカを迎えに行ったら次はそれについても調べてみましょう。 なにか懐かしい感じもします。 しばらくして、ジローさんのシラクサ便がやってきました。 クーデリカも戻ってきてひとあんしん。 ジローさんと話をしていると、なにやらブレイズスタンからおいしい匂いがしているようです。 元凶っぽいランディさんを調べてみることにしましょう。 私とジローさんしか感じていないようなので、町外れにすむ昔なじみのエルフのエルさんにも話をきいてみると、エルさんにもおいしい感覚を感じるみたいです。 投影体限定にわかるのでは?とあたりをつけておく。 そんなわけでランディさんに突撃取材をかましたところ、家はすごくおいしそうな匂いにつつまれておりました。 そんな突如、コボルドの一団が襲撃!ちょ、衛兵なにやってんですか!? どうやら目的はランディさんちのようで一目散にむかってきました。 撃退はしましたが、ランディさんちに突撃され、匂いの基をぶちまけられました。(自分の対処が悪かったってことはないよね?陰謀だ) 匂いの基は投影体をおびき寄せる、薬だったようで、なんでランディさんはそんなものをつくっていたんだろう? 軽く町が危機になりました。 クーデリカが知り、ジローさんに話をきいたところ、投影体を遠ざける対になる薬があるようで瓶一本分いただけたようです。 追加の薬をもらいにいくために、交渉としてランディさんが、その護衛として・・・非常に心配ですがクーデリカにいってもらうことになりました。 私もついていきたかったのですが・・町が危機なときに人手をこれ以上割くのはだめだとおもい、 ブレイズさんに協力して防衛に参加することに。 まあなんとかなりましたとさ。 しかし、何とかなったと思った直後に、軍隊がせめてきたとか、魔境ができたとか、ナパージュさんが死んだとか。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1651.html
394 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/19(土) 09 56 48 ID 7pEeoypI 「ん……?」 気が付くと、僕は立ったまま、紅麗亜の柔らかい胸に顔を埋めていた。 キスの気持ちよさのせいで、一瞬気をやってしまったらしい。 「紅麗亜」 顔を上げて紅麗亜と視線を合わせると、彼女は気まずそうに表情を曇らせた。 「申し訳ありません。ご主人様」 「え……何が?」 「接吻など生まれて初めてのことですから、つい、加減を忘れてしまいました」 そう言って、顔を赤らめる。意外に思った。 大人びた印象からして、その手のことには相当慣れているのだろうと思ったが、そうではないらしい。 「お嫌いですか? こんなはしたないメイドは」 「いや、そんなことは……」 儚げな様子で尋ねてきた紅麗亜に、僕は反射的に答えてしまう。 すると彼女は表情を輝かせ、両手で僕の顔を挟んだ。 「嬉しいです。ご主人様」 「うっ!」 また口付けをされる。しかも、さっきより強烈に。 「…………」 僕の意識はまたしても遠のき、次に気が付いたときには床に仰向けに横たわっていた。 そして、下腹のあたりに温かい、柔らかい重み。 紅麗亜が僕に、馬乗りになっていた。 「ご主人様。ご奉仕させてくださいませ」 潤んだ瞳で、僕を見下ろす紅麗亜。手を後ろにやってエプロンを外そうとしている。 「あ……」 さすがに、これ以上はまずいと思った。正直、キスだけでも後ろめたいのに…… 「ちょ、ちょっと待って……」 両手を伸ばして、紅麗亜を止めようとする。しかし、その手が逆に掴まれた。 「え……?」 「ご主人様……」 紅麗亜は、僕の手を自分の胸へと、強引に導いた。 そのため、僕が両手で彼女の胸を鷲掴みにする格好になってしまう。 「うあ!」 僕は驚いて、思わず目を見張った。 服を着た状態で見ると分からなかったが、大きいのだ。それもとてつもなく。 片手ではとうてい掴み切れず、こぼれそうになる。 「…………」 「ああ……ご主人様。そんなに強くなさっては……」 強くさせているのは紅麗亜なのだが、彼女主観では僕が揉んでいることになっているらしい。 慌てて手を放そうとしたが、紅麗亜は逆に僕の手を引き寄せる。 「もっと、もっと強く……」 「だ、駄目だよ。こんなの……」 「何が駄目だと言うのですか? ご主人様」 「!!」 思わず体がびくりとした。 紅麗亜のあの冷たい視線が、復活している。 「…………」 「駄目なのですか?」 僕に胸を揉ませたまま、高圧的な口調で詰問する紅麗亜。 「駄目じゃ、ないです……」 そう答えるしかなかった。 395 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/19(土) 10 00 55 ID 7pEeoypI 「結構です。では、お続けください」 紅麗亜は薄く笑いを浮かべ、僕の両手を解放した。 自分で揉めということなのだろう。 僕は背中に冷や汗を伝わらせ、震える手で紅麗亜の胸を揉み始めた。 「あっ、あん……」 それが快感なのか、紅麗亜の口からあえぎ声が漏れ始める。 しばらくすると、彼女は顔を紅潮させながら、またエプロンを外し始めた。 服越しでは飽き足らないということなのか。 「ああ……ご主人様。今度は直に……」 やがて紅麗亜はエプロンをかなぐり捨て、その下の黒い服のボタンに手をかけた。 黙ってその様子を見ているしかない僕。 一体どこまで行ってしまうのだろうか。 いや、答えは分かっていた。紅麗亜が満足するまで、どこまでも行くに決まっている。 「ああ……」 絶望しかかる僕。そのとき、救いの手が差し伸べられた。 ピンポン、という音が鳴ったのだ。 玄関の呼び鈴だった。 「く、紅麗亜。待って……」 「何ですか?」 胸を開けるのを中断した紅麗亜は、不機嫌そうに僕を見下ろした。 ピンポン 「お、お客さんが……」 「放っておけばよいのです」 「そ、そんな訳には……」 「ご冗談を。ご主人様にとって、メイドを寵愛することより重要なことなど、この世にありません」 ピンポンピンポン 「で、でも……大事なお客さんかも」 「例えばどなたですか?」 ピンポンピンポンピンポンピンポン 「ええと。その……」 僕は答えられなかった。心当たりはあるのだが、口に出せる雰囲気ではない。 紅麗亜は、それ見たことかという表情になる。 「ほら、御覧なさい」 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン 早く出ろ、と言わんばかりに呼び鈴が連打される。 396 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/19(土) 10 01 42 ID 7pEeoypI 「で、でも、あんなに鳴らしてるんだから……」 「続けます」 僕の言葉を無視し、ボタンを外していく紅麗亜。すると今度は、ドンドンと激しくドアを叩く音がした。そして叫び声。 「詩宝さん! いますか? いますよね? 開けてください!」 中一条先輩だ! 僕は心臓が飛び跳ねる気分がした。 いや、本当は分かっていたんだ。 さっきの電話の内容と言い、タイミングと言い、あの呼び鈴は中一条先輩以外にあり得ないと。 でも、認めたくなかった。怖いから。 ただでさえ機嫌を損ねただろうに、こんな風に紅麗亜としているところを見られたら…… どんな超ド級の雷が落ちるか、分かったものじゃない。恐れおののく僕。 「く、紅麗亜。先輩が……」 「どうやら、そのようですね。諦めの悪い女です」 僕の恐怖などお構いなしの様子で、紅麗亜はとうとうボタンを外し切り、メイド服の胸を大きく開いてしまった。 ブラはない。片方だけで成人の頭ほどありそうな乳房が、ブルン、ブルンと勢いよく飛び出す。 「さあ、存分にお嬲りください。痛くされても構いません。いかようにも、ご主人様のお好きに……」 「詩宝さん! 早く開けてください! 開けてくれないとドアを破りますよ!」 また、強くドアが叩かれる。僕はガタガタと震えながら、紅麗亜に懇願した。 「す、凄い体してるのは分かったからさ。また今度にしようよ。このままじゃ先輩が……」 「侵入してくるかも知れませんね」 「で、でしょ? だから……」 「見せ付けてやりましょう。私達主従の絆を。あの哀れで頭のおかしい女に」 「そ、そんな!」 「どうぞ。触ってください」 「無理だって!」 「早く」 「…………」 僕は動けずにいた。 いつしか、扉を叩く音も、先輩の声もしなくなっている。 帰ったのだろうか。 紅麗亜もそう思ったらしく、こう言った。 「もう帰ったようですね。所詮、ご主人様への思いもその程度だったのでしょう。ご主人様を真にお慕いするのは、メイドだけなのです」 「…………」 「さあ、ご主人様!」 また要求してくる。僕は仕方なく、両手を伸ばして紅麗亜の、剥き出しの胸に触れた。 「ああん……」 紅麗亜が甘い声を出す。そのとき、ピシッという音が聞こえた。 397 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/19(土) 10 03 18 ID 7pEeoypI ピシッ? ポルターガイストかな? ポルターガイストだよね? ポルターガイストだと信じたかった。 だが、音のした方に視線を向けたとき、僕の一縷の望みはあえなく潰えた。 居間の窓の外に、ドレスを着た女性が立っている。 170センチ台半ばに達する長身。グラマラスな体つき。 北欧の血の影響だという、特徴的な銀色の長い髪。 そう、中一条先輩が窓越しに、無表情でこちらを見ていた。 「うわああああああああああ!!」 恐怖の叫びを上げる僕。 先輩が手をついている窓ガラスには、ヒビが入っていた。 特殊な強化ガラスで、滅多なことでは割れないはずなのだが。 凄まじい腕力だ。 「ひいいいいいい!」 僕は、その場から逃げ出そうと暴れた。 しかし、紅麗亜に抑え込まれていて、全然動けない。 そればかりか、紅麗亜の胸に触れている手も、彼女に掴まれて離すことができなかった。 「フッ。まだいたのですか」 紅麗亜は先輩の方を見て、軽蔑の口調で吐き捨てる。そして次の瞬間、何を思ったか、紅麗亜はカクカクと腰を動かし始めた。 「ああっ、ああっ、あん、あん、ご主人様……」 「な、なっ……」 紅麗亜は僕に、馬乗りになっている。 そして腰の辺りは、紅麗亜のスカートで隠れている。 つまり今の状態を傍から見ると…… 「ぎゃああああああああ!!」 事の重大さに気付いた僕は、悲鳴を上げていた。 比喩でなく、僕の首と胴がGood Byeしかねない。 しかし、紅麗亜が自発的に止めてくれない限り、この状態からは抜け出せないのだ。 「止めて! 止めて! 止めて!」 必死に頼んだが、紅麗亜は止めるどころか、ますます腰の振りを激しくした。 もちろん僕の両手も離さない。 また、ピシッという音がした。